AIとは何か|機械学習・ディープラーニング・生成AIの違い

9 min 45 views

「AIとは何か」を調べると、書籍やサイトによって説明の仕方が少しずつ異なることに気づきます。この記事では、OECDや総務省など公的機関の資料を基に、AI・機械学習・ディープラーニング・生成AIの関係を整理し、AIサービスを比較する前に知っておきたい基礎を確認します。

結論:AIに唯一の定義はないが、代表的な定義と用語の関係は整理できる

「AIとは何か」を一言で表す、世界共通の単一の定義は確立していません。

総務省の情報通信白書は「AIに関する確立した定義はない」と説明しています。一方で、AIに定義や判断基準がまったくないわけではありません。OECDなどの国際機関や、各国の政府機関が、それぞれの政策や制度に応じた定義を示しています。

AIの基礎を理解するうえで、まず押さえたいのは次の3点です。

  • OECDは、AIシステムを、入力から予測・コンテンツ・推薦・意思決定などの出力方法を推論する機械ベースのシステムとして定義している
  • 総務省の整理を含む一般的な技術分類では、「AI ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニング」という包含関係になる
  • 生成AIは、文章、画像、音声などの新しいコンテンツを生成できるAIの一種である

AIという言葉は、特定の一つの技術だけを指すものではありません。ルールに基づいて判断するシステム、データからパターンを学ぶ機械学習、ニューラルネットワークを多層化したディープラーニング、新しいコンテンツを作る生成AIなど、幅広い技術やシステムを含みます。

この全体像を押さえると、「AIは全部同じもの」という誤解を避けやすくなり、個別のAIサービスを比較するときにも、機能や用途の違いを理解しやすくなります。

AIの代表的な定義

なぜAIに「唯一の定義」がないのか

総務省の令和元年版情報通信白書は、AIについて「確立した定義はないのが現状」と説明しています。

同白書では、AIをあえて説明するなら、次のような広い概念で理解されているとしています。

  • 人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム
  • 人間が知的と感じる情報処理や技術

AIは、研究分野、製品、法令、リスク管理など、使われる場面によって対象範囲が変わります。技術の進歩によって、以前はAIと呼ばれていた処理が一般的なソフトウェア機能として扱われることもあります。

そのため、「AIに定義がない」というより、「すべての用途に共通する唯一の定義が確立していない」と理解する方が正確です。

本記事では、唯一の正解を示すのではなく、OECDと総務省の公的資料を軸に、代表的な定義と技術分類を整理します。

公式情報:総務省 令和元年版情報通信白書「AIに関する基本的な仕組み」

OECDによるAIシステムの定義

国際的に参照されている定義の一つが、OECDのAIシステム定義です。

OECD加盟国は2023年11月、AIシステムの定義の改定版を承認しました。現在のOECD AI Principles公式ページには、次の定義が掲載されています。

An AI system is a machine-based system that, for explicit or implicit objectives, infers, from the input it receives, how to generate outputs such as predictions, content, recommendations, or decisions that can influence physical or virtual environments. Different AI systems vary in their levels of autonomy and adaptiveness after deployment.

本記事による要点整理では、AIシステムは次のように説明できます。

「明示的または暗黙的な目的のため、受け取った入力から、物理的または仮想的な環境に影響を与え得る予測、コンテンツ、推薦、意思決定などの出力をどのように生成するかを推論する、機械ベースのシステム。AIシステムによって、自律性や導入後の適応性の程度は異なる」

この定義には、次の要素が含まれています。

  • 機械ベースのシステムである
  • 目的は明示的な場合と暗黙的な場合がある
  • 入力から出力の生成方法を推論する
  • 出力には予測、コンテンツ、推薦、意思決定などがある
  • 物理的または仮想的な環境に影響を与える場合がある
  • 自律性や導入後の適応性はシステムによって異なる

OECDの改定解説では、生成AIを定義の対象として明確にするため、出力例に「content」が追加されたことも説明されています。

また、改定は、EUや日本を含む国際的な政策・規制プロセスとの広範な整合を促すことも目的としていました。これは、すべての制度で定義文が完全に同一という意味ではありません。

なお、OECD AI Principles自体は2019年に採択され、2024年5月に技術・政策の変化を反映して更新されています。AIシステムの改定定義は、OECDのAIに関する勧告の一部として掲載されています。

公式情報:OECD AI PrinciplesOECDによるAIシステム定義改定の解説

AI・機械学習・ディープラーニングの関係

AI、機械学習、ディープラーニングは同じ意味ではありません。

総務省の情報通信白書で示される一般的な技術分類では、次の包含関係になります。

AI ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニング

これは、ディープラーニングが機械学習に含まれ、機械学習がAIを実現する手法の一つに含まれる、という意味です。

AIとは

AIは、この3つの中で最も広い概念です。

総務省の情報通信白書は、AIを「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム」や「人間が知的と感じる情報処理・技術」といった広い概念として説明しています。

AIを実現する方法は機械学習だけではありません。情報通信白書は、機械学習以外のAIの例として、専門家の知識をルールとして組み込むエキスパートシステムを挙げています。

そのため、AIと機械学習を完全な同義語として扱うのは正確ではありません。

機械学習とは

機械学習は、AIを実現する手法の一つです。

総務省の情報通信白書は、機械学習を、人間の学習に相当する仕組みをコンピューターなどで実現するものとして説明しています。

一定のアルゴリズムに基づいて入力データからパターンやルールを発見し、そのパターンやルールを新しいデータに当てはめることで、識別や予測などを行います。

たとえば、多数の画像と対応する情報から特徴を学び、新しい画像が何を写しているか分類する処理などが該当します。

機械学習には、教師あり学習、教師なし学習、強化学習などの方法があります。

ディープラーニングとは

ディープラーニングは、日本語で深層学習と呼ばれます。

総務省の情報通信白書は、深層学習を「多数の層から成るニューラルネットワークを用いて行う機械学習」と説明しています。

ニューラルネットワークは、人間の脳の神経回路から着想を得た数理モデルです。ディープラーニングでは、ニューラルネットワークを多層化し、複雑な特徴をデータから学習します。

したがって、関係を大きい順に並べると次のようになります。

  • AI:最も広い概念
  • 機械学習:AIを実現する手法の一つ
  • ディープラーニング:機械学習の手法の一つ

この包含関係は、公的資料で示される一般的な技術分類です。ただし、AI自体に世界共通の単一の定義がある、という意味ではありません。

公式情報:総務省 令和元年版情報通信白書「AIに関する基本的な仕組み」NEDO「AI 知っておきたい基礎知識」

生成AIとは

生成AIは、文章、画像、音声、動画、プログラムなど、新しいコンテンツを生成できるAIの一種です。

総務省の「生成AIはじめの一歩」では、生成AIを次のように説明しています。

「コンピュータがまるで人間のように、新しいものを作り出すことができる技術」

同資料では、生成AIの例として、話を作る、絵を描く、音楽を作るといった用途が挙げられています。

生成AIは、学習データに含まれるパターンをもとに、入力された指示に応じて新しい出力を生成します。文章生成AIであれば、入力された文章に続く可能性が高い語句などを計算しながら、回答を組み立てます。

「新しいコンテンツを生成する」といっても、人間と同じ方法で内容を理解したり、事実を保証したりしているとは限りません。生成結果には誤りや、もっともらしい作り話が含まれる場合があります。

公式情報:総務省「生成AIはじめの一歩」

生成AIと認識・予測型AIの違い

初心者向けに大まかな用途で分けると、生成AIと、認識・分類・予測を主な用途とするAIには次の違いがあります。

生成AIと認識・分類・予測を主とするAIの用途比較(確認日:2026年7月12日)
比較項目 生成AI 認識・分類・予測を主とするAI
主な目的 新しいコンテンツを生成する 入力を識別・分類・予測する
出力例 文章、画像、音声、動画、プログラム 分類結果、予測値、異常検知、スコア
利用例 文案作成、画像生成、要約、翻訳 画像認識、需要予測、不正検知、故障予測
主な注意点 誤情報、著作権、機密情報、偏り 誤判定、データの偏り、説明可能性

大まかにいえば、生成AIは「新しく作る」ことが目立つAIで、認識・分類・予測型AIは「既存の入力を判断する」ことが中心です。

ただし、これは厳密な二分法ではありません。

生成AIも内部では予測処理を利用します。また、実際のサービスでは、検索、分類、推薦、予測、コンテンツ生成などが組み合わされることがあります。

OECDのAIシステム定義も、出力例として予測、コンテンツ、推薦、意思決定を並列に挙げています。生成AIとそれ以外のAIは、完全に排他的な分類ではありません。

「生成AIはコンテンツ生成を主な用途とするAIの一種」と理解するのが実務的です。

AIと生成AIは同じものではない

生成AIはAIに含まれますが、すべてのAIが生成AIというわけではありません。

関係を整理すると、次のようになります。

  • AI:知的とされる情報処理を行う技術やシステムを含む広い概念
  • 機械学習:AIを実現する手法の一つ
  • ディープラーニング:機械学習の手法の一つ
  • 生成AI:新しいコンテンツを生成する用途・能力を持つAI

生成AIの多くは機械学習やディープラーニングを利用しています。ただし、「生成AI」は出力の性質や用途に着目した呼び方であり、「ディープラーニング」は技術的な手法に着目した呼び方です。

分類の基準が違うため、生成AIとディープラーニングを同じ階層の用語として単純に並べるのは適切ではありません。

AIの身近な利用例

AIは、生成AIが注目される以前から、さまざまな場面で利用されています。

認識・分類

  • 画像に写っている物体の判別
  • 音声の文字起こし
  • 迷惑メールの分類
  • 製品の不良検知

予測

  • 商品の需要予測
  • 設備の故障予測
  • 売上や在庫の予測
  • 天候データなどを使った予測

推薦

  • 動画や音楽のおすすめ
  • ECサイトの商品推薦
  • ニュース記事の表示順
  • 求人や広告のマッチング

生成

  • 文章の作成や要約
  • 画像や音声の生成
  • アイデアの候補作成
  • プログラムコードの生成

一つのサービスが、複数のAI機能を組み合わせていることもあります。たとえば、入力内容を分類してから情報を検索し、その結果をもとに文章を生成する仕組みです。

AIを利用するときの注意点

AIは便利ですが、出力が必ず正しいとは限りません。

特に生成AIを業務で利用する場合は、次の点を確認してください。

出力の正確性

生成AIは、事実と異なる内容を自然な文章で出力する場合があります。重要な情報は、官公庁、法令、契約書、公式仕様などの一次資料で確認する必要があります。

個人情報・機密情報

入力した情報がどのように保存・利用されるかは、サービスや契約プランによって異なります。

個人情報、顧客情報、未公開の業務情報、認証情報などを入力する前に、利用規約、プライバシーポリシー、管理者設定を確認してください。

著作権・第三者の権利

AIが生成した文章や画像であっても、第三者の著作権、商標権、肖像権などに関する問題がなくなるわけではありません。

生成物を公開・販売・広告利用する場合は、人間による確認が必要です。

偏りと公平性

学習データやシステム設計の影響により、出力や判定に偏りが生じる場合があります。

採用、融資、評価など、人に大きな影響を与える用途では、AIの出力だけで判断せず、説明可能性や異議申立ての仕組みも検討する必要があります。

セキュリティ

外部からの不正な指示、情報漏えい、不適切な出力などのリスクがあります。利用者だけでなく、開発者や提供者も、用途に応じた安全対策を行う必要があります。

日本のAI事業者ガイドライン

日本では、AIの開発・提供・利用に関する基本的な考え方として、総務省と経済産業省が「AI事業者ガイドライン」を策定しています。

第1.0版は2024年4月に公表され、その後、次のように更新されています。

  • 第1.0版:2024年4月
  • 第1.01版:2024年11月
  • 第1.1版:2025年3月
  • 第1.2版:2026年3月31日取りまとめ

2026年7月12日の確認時点では、第1.2版が最新版です。経済産業省の最新版掲載ページは2026年4月1日に最終更新されています。

AI事業者ガイドラインは、AIの開発者、提供者、利用者に向けて、AIの安全・安心な活用に必要な取組の基本的な考え方を示しています。

主な観点には、次のようなものがあります。

  • 人間中心
  • 安全性
  • 公平性
  • プライバシー保護
  • セキュリティ確保
  • 透明性
  • アカウンタビリティ
  • 教育・リテラシー
  • 公正競争確保
  • イノベーション

ガイドラインは法律そのものではありませんが、AIを業務で開発・提供・利用する事業者が、リスク管理や社内ルールを検討する際の公的な参考資料になります。

実際の利用では、AIの用途、影響を受ける人、扱うデータ、誤作動時の影響などに応じて、必要な対策を検討します。

著作権、個人情報保護、業法などの具体的な法的判断は、AI事業者ガイドラインだけで完結するものではありません。必要に応じて、各法令、所管省庁の資料、専門家の確認が必要です。

公式情報:経済産業省「AI事業者ガイドライン第1.2版」

AIに関する用語の早見表

AI関連用語の早見表(確認日:2026年7月12日)
用語 意味 関係
AI 人間が知的と感じる情報処理などを含む広い概念 最も広い
機械学習 データからパターンやルールを学ぶ手法 AIの手法の一つ
ディープラーニング 多層ニューラルネットワークを用いる機械学習 機械学習の手法の一つ
生成AI 文章・画像・音声などの新しいコンテンツを生成するAI AIの一種
ニューラルネットワーク 脳の神経回路から着想を得た数理モデル ディープラーニングなどで利用
学習 データからパターンやモデルを作る工程 機械学習の工程
推論 学習済みモデルに入力を与えて出力を得る工程 AIシステムの利用工程

よくある質問

Q. AIと機械学習は違うものですか?

AIと機械学習は、対立する別物ではありません。

総務省の整理を含む一般的な技術分類では、機械学習はAIを実現する手法の一つです。AIの方が広い概念であり、機械学習を利用しないAIもあります。

Q. ディープラーニングとAIの関係は?

ディープラーニングは機械学習の手法の一つで、機械学習はAIの手法の一つです。

一般的な包含関係は、次のとおりです。

AI ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニング

ただし、これは技術分類の整理であり、AI自体に世界共通の単一の定義があるという意味ではありません。

Q. 生成AIと普通のAIは何が違いますか?

生成AIは、文章、画像、音声などの新しいコンテンツを生成するAIの一種です。

認識・分類・予測を主な用途とするAIは、画像の判別、需要予測、不正検知などに使われます。

ただし、これは大まかな用途分類です。実際のAIシステムでは、生成、検索、分類、予測、推薦などが組み合わされることがあります。

Q. 生成AIはディープラーニングですか?

現在の主要な生成AIの多くは、ディープラーニングを利用しています。

ただし、生成AIは「どのような出力を作るか」に着目した呼び方で、ディープラーニングは「どのような技術手法を使うか」に着目した呼び方です。分類基準が異なります。

Q. AIの正式な定義を一つだけ知りたいのですが?

すべての分野で共通する唯一の定義は確立していません。

国際的な代表例としては、OECDのAIシステム定義があります。国内の一般向け説明では、総務省の情報通信白書などが参考になります。

法令、契約、社内規程などでAIの範囲を判断する場合は、その文書で採用されている定義を確認してください。

Q. AIの回答は正しいですか?

必ず正しいとは限りません。

生成AIは、事実と異なる内容を自然な文章で出力する場合があります。重要な情報は、公的機関、法令、公式仕様、原典などで確認してください。

Q. AI事業者ガイドラインは法律ですか?

AI事業者ガイドラインは、AIの開発・提供・利用に必要な取組の基本的な考え方を示すガイドラインです。

ガイドラインだけで具体的な法的判断が完結するわけではありません。個人情報保護、著作権、消費者保護、業法など、用途に関係する法令も別途確認する必要があります。

まとめ

AIには、すべての用途に共通する世界唯一の定義が確立しているわけではありません。

一方、OECDは国際的に参照されるAIシステムの定義を示し、総務省はAI、機械学習、ディープラーニングの関係を公的資料で整理しています。

一般的な技術分類では、関係は次のようになります。

AI ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニング

生成AIは、文章、画像、音声などの新しいコンテンツを生成するAIの一種です。ただし、生成AIと認識・予測型AIは完全に排他的ではなく、実際のサービスでは複数の技術や機能が組み合わされます。

AIサービスを比較するときは、「AIかどうか」だけでなく、次の点を確認すると理解しやすくなります。

  • 何を入力するのか
  • どのような出力を生成するのか
  • 機械学習や生成AIをどの部分で使っているのか
  • 出力を人間が確認できるか
  • 個人情報や機密情報をどのように扱うか
  • 誤りが起きた場合にどのような影響があるか

用語の関係を押さえたら、次は生成AIサービスの料金・機能・データ取扱いを比較する記事へ進むと、サービスごとの違いを判断しやすくなります。

sho

sho

はじめましてshoです。会社員をしながらこのブログを運営しています。ITやAIって難しそうで敬遠されがちですよね。でも実際使ってみると、日常がすごく楽になることを知りました。「分からないから使わない」じゃなくて、「分かれば使える」に変えたい。このブログでは、専門用語なしで、実体験ベースの情報だけをお届けします。ITの良さをもっと身近に感じてもらえたら嬉しいです。一緒に便利な暮らしを作っていきましょう。

FOLLOW

カテゴリー:
関連記事