新卒で大手SIerに入社して、気づけば3年が経ちました。
就職活動をしていた頃の私は、大手SIerに対してキラキラしたイメージを持っていました。万人規模の従業員数、誰もが知る企業名、最新技術を使った大規模プロジェクト。そこでSEとして技術を磨き、プレーヤーとしてゴリゴリにコードを書き、システムを作り上げていく——。そんな未来を描いていました。
あれから3年。
実際にその世界に入り、内側から見えてきた景色は、想像していたものとは随分違っていました。
辞めたいと思ったことは一度もありません。でも、自分のキャリアに対する漠然とした不安は、正直なところ常に頭の片隅にあります。
今日は、大手SIerで働く新卒3年目のSEとして、良い面も悪い面も、迷いも含めて正直に書いてみようと思います。
📌 この記事でわかること
- 大手SIerで「コードを書かない」SE業務のリアル
- 3年目でいきなりチームリーダーを任される理由
- 「配属ガチャ」が都市伝説ではない残酷な現実
- それでも大手SIerを選んで良かった理由
- 就活生・転職検討者が面接で確認すべきこと
目次
最大のギャップ:「コードを書かない」SE業務の実態
入社して最初に驚いたのは、思っていたより圧倒的にコードを書かないことでした。
私の1日の業務を大まかに分けると、こんな感じです。
📊 大手SIer・SE 3年目の1日の業務内訳
40%
40%
20%
💻 コードを書く時間は…ほぼゼロ。書かない日も珍しくない。
「実務」の中身も、設計書のレビュー、進捗管理、課題の整理、資料作成など。実際にコードを書く時間は、思っているより遥かに少ない。というか、全く書かない日も珍しくありません。
なぜか。
それは、実際にコードを書くのが「BP(ビジネスパートナー)」と呼ばれる、グループ会社や協力会社の方々だからです。
就活では見えなかった「多重下請け構造」
就活の時、この構造をちゃんと理解していませんでした。
大手SIerのプロジェクトでは、自社の社員は少数で、実際に手を動かす人たちの多くはBPの方々です。私が関わっているプロジェクトでも、BPの方が圧倒的に多い割合を占めています。
🏢 大手SIerプロジェクトの典型的な構成
マネジメント・レビュー・調整
設計・開発の実作業
コーディング・テスト
※プロジェクトによって構成は異なります
そして、私たち自社の社員に求められているのは、プレーヤーとしてコードをゴリゴリ書くことではなく、BPの方々をまとめて、プロジェクトを前に進めるマネジメントでした。
技術力は必要です。でも、使う場面が全く違う。
コードを書いて実装するためではなく、設計をレビューするため、課題を判断するため、BPの方に的確な指示を出すため。そのために技術を理解している必要がある、という構造です。
3年目でいきなり「チームリーダー」という衝撃
そして、3年目になって一番驚いたのが、いきなりチームリーダーを任されたことです。
もちろん、小規模なチームですし、上司のフォローもあります。でも、名目上は「リーダー」です。BPの方々に指示を出し、進捗を管理し、課題を解決していく立場に立ちます。
正直に言うと、最初は戸惑いました。
😰 3年目リーダーの戸惑い
- 技術力に自信があるわけでもない
- マネジメントの経験もほとんどない
- 自分より年上のBPさんたちをまとめる立場
- 経験豊富なベテランエンジニアに指示を出す役割
でも、やってみてわかったことがあります。
これは、意図的にそういう設計になっているんだと思います。
技術力が完璧になるまで待っていたら、いつまでもリーダーにはなれません。だから、あえて3年目という早い段階で、まだ完璧じゃない状態でリーダーを経験させる。
その過程で、自分に何が足りないのかを嫌というほど自覚させられます。技術的な知識が足りない。コミュニケーション能力が足りない。判断力が足りない。
そして、その「足りない」を埋めるために、休みの日に勉強したり、本を読んだり、先輩に相談したりするようになる。
結果的に成長はします。でも、その成長の方向性が、入社前に思い描いていた「技術を極める」というものとは少し違うんです。
「配属ガチャ」は都市伝説ではない残酷な現実
もう一つ、3年経って痛感しているのが、「配属ガチャ」という言葉の重みです。
就活の時、先輩から「配属先で全然違うよ」とは聞いていました。でも、それがどれほど現実的で、どれほど深刻なことなのか、正直わかっていませんでした。
同期と話していると、本当に全然違います。
🎰 「配属ガチャ」で変わるもの
⏰
残業時間
月20h〜80h以上まで
💰
ボーナス
部署で大きく変動
🏠
リモート頻度
週0〜5日まで様々
📚
身につくスキル
技術 or 管理 or…
👥
人間関係
天国 or 地獄
🎯
やりがい
案件次第で天地の差
同じ会社、同じ年次なのに、まるで別の会社にいるような違いがある
私の場合、残業は月平均25時間くらい。リモートは週2〜4日。人間関係も良好で、変な人がいないので、その点のストレスは本当にゼロに近い。
これは、恵まれています。
でも、それが自分の実力や選択の結果ではなく、ただ「運が良かった」だけだと自覚しています。
別の部署に配属されていたら、全く違う3年間を過ごしていたかもしれません。
この「運要素」の大きさは、大企業ならではのものだと思います。
救われている部分:人間関係ストレスゼロという奇跡
それでも、大手SIerに入って良かったと思う部分もあります。
一番大きいのは、人間関係のストレスがほとんどないことです。
これは配属先に恵まれた部分もありますが、全体的に見ても、理不尽な上司や、攻撃的な同僚に遭遇する確率は低いように感じます。採用の段階で、ある程度フィルタリングされているのかもしれません。
私の周りには、変な人がいません。これは本当にありがたいことです。パワハラまがいの言動をする人もいないし、困ったときは相談に乗ってくれる先輩もいます。
✨ 大手SIerで良かったこと
働きやすさという点では、間違いなく恵まれている環境です。
3年目の迷い:「手を動かしたい」欲求との戦い
それでも、迷いがあります。
私は、もう少し手を動かしたい。実務の中で、コードを書きながらスキルを身につけたい。
でも、今の立場では、それがどんどん難しくなっていきます。
🤔 3年目SEのジレンマ
BPの方々の上に立ちチームをまとめていく立場なので、自分で休みの日などに勉強して知識を増やしていく必要がある。でも、もう少し手を動かして実務の中でスキルを身につけたい気持ちもある。その結果、自分のキャリアに漠然とした不安がある。
マネジメント側に立つということは、自分が直接手を動かす時間が減るということです。BPの方々に任せて、自分は全体を見る立場になる。
それが、大手SIerのSEに求められている役割なんだと、今は理解しています。
でも、心のどこかで「このままで本当にいいのか」という不安があります。
技術力を磨きたいのに、実務で技術を使う機会が少ない。だから休日に勉強するしかない。でも、それで身につく知識と、実際の業務で求められるマネジメント能力のバランスが、どうもしっくりこない。
転職市場で評価されるのは、どっちなんだろう。マネジメント経験なのか、技術力なのか。
そんなことを考えてしまう瞬間があります。
これから大手SIerを目指す人へ:面接で確認すべきこと
もしこれから大手SIerを目指す人がいるなら、面接の時に確認しておいてほしいことがあります。
📋 就活・転職で必ず確認すべき3つのこと
1️⃣ キャリアのモデルケース
3年目、5年目の社員が、具体的にどんな働き方をしているのか。どんな役割を担っているのか。「成長できる環境です」という抽象的な言葉ではなく、「3年目でチームリーダーを経験します」「BPの方々と協力してプロジェクトを進めます」といった具体的な情報を聞いてください。
2️⃣ 働く相手の構成
自社の社員と、BPの方々の比率。これによって、求められる役割が全く変わります。所属する会社の人間と働くと思っていたら、実際はBPの方が圧倒的に多いということも珍しくありません。
3️⃣ 配属先の決まり方
希望がどの程度通るのか、異動の頻度はどうか。ボーナスや残業時間は社内で同じ年数でも同じではありません。配属先とプロジェクトで全てが決まってしまう部分があることを理解しておきましょう。
そして、覚悟しておくべきことは、「全ては配属される部署とプロジェクトによる」という現実です。
これは、良くも悪くも、大企業の特徴です。
それでも大企業を選んで良かったと思う理由
ここまで書いてきて、ネガティブな印象を与えてしまったかもしれません。
でも、私は今も、大手SIerを選んだことを後悔していません。
近年の賃上げや福利厚生、ネームバリュー。これらは、やはり大企業ならではのものです。
人間関係のストレスが少ない環境で、それなりに働きやすい条件で、安定した収入を得られる。これは、決して小さなことではありません。
キャリアに不安はあります。もっと手を動かしたいという欲求もあります。
でも、それは「今の環境が悪い」というより、「自分がどうなりたいのか、まだ完全には決めきれていない」ということなのかもしれません。
もしかしたら、あと数年経ったら、マネジメントの面白さに目覚めるかもしれない。もしかしたら、やっぱり技術を極めたくて、転職するかもしれない。
どちらに転んでも、大手SIerで3年間働いた経験は、無駄にはならないと思っています。
まとめ:3年目で見えてきた、入社前には見えなかった景色
就活生や転職を考えている人に伝えたいのは、「大手SIerはこういうところだよ」という一面的な答えではなく、「配属先によって全然違うし、自分が何を求めているかで評価も変わる」という、少し曖昧だけど正直な現実です。
📝 この記事のまとめ
| コードを書く機会 | 想像より圧倒的に少ない。BPが実装を担当。 |
| 求められる役割 | プレーヤーではなく、マネジメント。 |
| 配属ガチャ | 残念ながら、都市伝説ではない。 |
| 人間関係 | 比較的恵まれている環境が多い印象。 |
| 福利厚生・給与 | 大企業ならではの安定感。 |
私自身、まだ答えは出ていません。
でも、3年目の今、見えてきたリアルを、こうして言葉にすることで、誰かの選択の参考になればと思います。
※この記事は個人の体験に基づくものであり、すべての大手SIerに当てはまるわけではありません。会社や部署、プロジェクトによって状況は大きく異なります。
